虫歯も歯周病もそれぞれ原因となるばい菌(細菌)によって引き起こされる感染症と考えていただいてよろしいでしょう。それでは、原因となっている細菌をやっつければそれで済むかということになるのですが、そう簡単ではありません。お口の中は適度の温度、湿度、たくさんの栄養分があるためにそれらの細菌にとっては住み心地のよい場所なのです。ですから、退治しても細菌はすぐに戻って来ます。常在菌と言っておなかの中の腸にもいるのですが、ある種の細菌が体とのバランスをとりながら常に存在しているのです。
そこで、退治できないのなら活動を抑えることを考えるわけです。細菌の餌となる歯の表面に付着した食べかす(プラーク)をできるだけ少なくする-これをプラークコントロールと言います-にはどうすればよいのか。隅々まで磨こうとすると歯の並び方にもよりますが、20本以上あれば10分以上の時間はかかります。細菌への栄養をシャットアウトすることを考えれば、一日のうち一回は、できれば寝る前がよいのですが、(歯磨き粉をそんなにつけなければ洗面所以外の居間でもテレビを見ながら、新聞を読みながらでも磨くことができます。)ゆっくり時間をかけて歯のお手入れをしていただきたいと思います。ただ、強い力で磨けば歯と歯ぐきを傷めることになり逆効果です。また、虫歯と歯周病の予防に対する磨き方も違いますし、フロス、歯間ブラシなどを補助的に使用した方がよい場合もあります。
磨けていると思っても結構磨き残しがあるものです。一度、歯科医院でお口全体の状態を診てもらったうえで「染め出し」といってどの程度まで歯磨きができているのかを確認されてはどうでしょう。毎日のことですから、お口に合った歯ブラシの選び方から正しい磨き方を指導してもらって、自分に合った磨き方をマスターされることをお勧めします。
No.9『 予防の基本は歯ブラシ 』