出土した縄文時代人の顎の骨を見ると、骨太でたくましく、いかにも良く噛めそうです。現代人に多い八重歯や乱杭歯もなく、歯並びもきれいだったことがわかります。これに対して現代の我々の顎はというと、いかにも小さくひ弱で、そのために逆三角形の顔つきをしている人がたくさんおられます。この変化はいったいいつ頃起こったものでしょうか。
顎が小さくなった最大の要因は食生活の変化が原因だといわれています。江戸時代の殿様は贅沢でやわらかい食事を摂っていたので、食べ物をしっかり噛むという生活習慣がなく、既に顎の大きさに変化が起きていました。この変化が一般にも見られるようになったのは、ここ100年以内だと思われますが、最近30~40年の変化は特に顕著です。人類の進化の歴史上、このように急激な変化が顎に生じたことはありませんでした。その結果歯並びの乱れが重症化してきています。例えば親知らずが正常に生えず、歯肉の炎症を起こし痛くなり抜歯に至る場合もあります。
さらに、最近の小中学生の症例の中には、下顎の第2大臼歯(親知らずの1本手前、いわゆる12歳臼歯)ですら正常に生えないケースも増加しています。加えて前歯部に乱杭歯が見られるようであれば矯正歯科治療時に一部の永久歯を抜歯しなければ治せないという場合もあります。
昨年の12月23日付のこの欄では、だ液分泌にはよく噛むことが大切であると掲載されていましたが、良い歯並びのためにもやわらかいものばかり食べず、しっかり咀嚼(そしゃく)することを心がけてください。子供のときから顎の骨の発育のためにも「しっかり噛め噛め!!」
No.23『最近の顎(あご)事情』